地下アイドルなりのハッピーエンド-白川花凛

元・底辺グラビアアイドル白川花凛のブログです。

地下アイドル版人魚姫

昔々ある深海のあるところにライブハウスがありました。

トリの「MERMAID☆GIRLS」のセンターを担当する彼女の名前は「魚村民子」、通称「魚民(うおたみ)」


2番が始まる前の「まだまだい↑く↓よ~!」という特徴的な煽りはとても有名で、有名イラストレーターの「ウナギが推す」さんがLINEスタンプのイラストを書くほどでした。

 

ある日、個人動員に伸び悩んだ魚民は日本武道館にフライヤーを配りに行くことにしました。

しかし、チケット代7,000円の地上アイドルの会場に赴くことは通常チケット代金3,500円(D込)の彼女にとってとても不安なことで、思わず足がすくんでしまいました。

結局魚民はその日フライヤーを配らず帰宅し、Youtubeを見て地上アイドルの勉強をしていました。

 

(やっぱ地上っていいなぁ……。でも深海も深海で居心地がいいし……。)

 

地上アイドルの勉強に飽きてきた魚民がTwitterのリプ返に勤しもうとすると、カメラが客席を写し始めました。

すると、魚民の目はある1人のヲタクに釘付けになったのです。

パッと見るところ、22歳くらいでしょうか。彼は蛍光色の黄緑色のTシャツを着て、手と口には同色のサイリウムをおぞましい本数で持っており、黒いジャンパーを着たスタッフに両脇を抱えられて客席から連行されるところでした。

 

その姿を見て、魚民は思ったのです。

 

(なんてかっこいいんだろう……。)

 

その日から魚民は、地上アイドルのオーディションを「月刊デビュー」や「月刊Audition」などの雑誌を買ってチェックするようになりました。

あるライブの日、魚民は一番乗りをして楽屋にて雑誌付属の履歴書に自己PRを記入しているときに後ろに気配を感じました。

 

「魚民、お前何だその紙は。」

その声の主は魚民が所属するMERMAID♡GIRLSの運営でした。

 

「お前、このグループを抜けて他のオーディションを受けようとしているのか?お前みたいな奴が地上で生きていけるわけないだろう。」

「……。」

 

「それに、契約期間は2年と決まっているだろう。あと1年もある。もしこのグループを辞めるのなら、一生芸能活動ができないように根回ししてやるからな。

 

その後も運営は「お前のようなやつは一生地上には上がれない」「まず動員を増やしてから言え」「大体お前はSNSの更新が少ない」など色々何か言っていました。このようなことは日常茶飯事でしたが、この日の魚民は違いました。

 

「……よ…。」

「あ?」

「っるっせーんだよこの芸能かぶれ元三流バンドマンがよ!!!」

 

「私はただ惰性でライブに通ってる奴よりも、一瞬しかないその時のライブを全力で楽しむ奴が好きなんだよ!!!!!!!」

 

そう言い放つと魚民はこんなこともあろうかと用意していたキャリーバッグをぶん投げました。中には衣装を入れてあり、この後「魚民が衣装を持ち逃げしました」などSNSで拡散されないようにしていました。

深海アイドルを辞めた魚民は黄緑色のピンチケを探すべく、インターネットを駆使して彼のTwitterアカウントを特定しました。
そしてまずは彼の周りの友人から固めようと、魚民はせっせとその現場に通うようになりました。
また、何が彼をそんなに熱くさせたのか、地上アイドルのことを勉強するために熱心にライブを見ました。

 

自分にはない圧倒的カリスマ性や歌唱力が地上アイドルにはありました。

高校3年生の魚民が付け焼き刃のダンスと歌で今から地上アイドルレベルに辿り着くには、人の粋を超えた体力と努力が必要でした。

また、弱小とは言えども元運営の邪魔が入ると考えたらその道程は長く険しいものでした。

魚民は得意だったダンスも歌も辞めてしまいました。今までずっとアイドル活動ばっかりしていたのであまり友達もいないし、頭もよくありません。

 

人生詰んだ……。

 

そう思ったときに、支えてくれたのがあの武道館でみた地上アイドルでした。

今では魚民が最前中央で黄緑サイリウムをバルログして、出禁になろうがあの手この手ヲタサーの姫の権力を駆使しチケットを入手し、常に最前中央を確保する最強の女ヲタになったのです。

 

深海で鍛えた脚力を駆使したジャンプは、それはそれはとても高く、彼女のことをヲタクたちはこう呼びました。

 

「人魚姫」と……。


あと一目惚れしたヲタクは出禁になった上に女ヲタヲタが激しかったそうでわりと序盤で冷めました。めでたしめでたし。

 

おしまい。

 

 

太陽の楽園~Promised Land~

太陽の楽園~Promised Land~

  • 神戸みゆき
  • アニメ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes